季節の持つイメージに色をあてはめるとしたら、あなたにとって夏は何色ですか? 晴れ渡った空の紺碧の青。透き通った海のマリンブルー。勢いよく生い茂る夏草の力強い緑色。それとも太陽に向かってのびる向日葵の黄色? これは好みの問題で、正解などはありません。しかし、夏の能登半島は観光客にとって魅力的な場所で、開放的に感じられる季節であるのは多くの人が認めるところでしょう。
日本の渚・百選の1つに選ばれた珠洲鉢ヶ崎海岸は、他県からも海水浴客が訪れる美しい砂浜です。透明度の高い遠浅の海岸で泳いでいると、小さな魚の姿を見ることもよくあります。近くにはオートキャンプ場やケビンや温泉もあり、子ども連れで気軽にたずねられる海水浴場としてにぎわいます。今年はりふれっしゅ村鉢ヶ崎を中心会場として、8月3日から7日にかけて「第14回日本ジャンボリー」が開催され、日本全国からボーイスカウトの団体がこの地に集い、キャンプ体験などを行うそうです。一年で一番海が美しく見えるこの時期に珠洲を訪れるみなさんが、珠洲のファンになっていただけたら嬉しく思います。
そして珠洲の夏の風物詩として忘れてはならないのがお祭りです。7月20日の飯田灯籠山祭り(お涼み祭)を皮切りに珠洲の夏が始まります。月遅れの七夕に行われる8月7日の宝立キリコ祭りは、そのキリコの勇壮さで石崎奉灯祭(七尾市)に見劣りするものではありません。見付海岸一帯で大きなキリコが並ぶ姿は一見の価値があります。夜十一時過ぎに花火が打ち上げられる頃、祭りはクライマックスを迎え、キリコの海中渡御が始まります。かがり火に照らされた波間で揺れているキリコはとても美しいです。観光客をひきつける大掛かりな宝立キリコ祭りのほかにも、小さな集落単位で今でもこの時期に七夕キリコを出すところもあるという事実は、毎年変わらずに季節が過ぎていくことを大切に思う、能登の貴重な民俗行事です。私にとっての夏は、この日を境にブルーからグリーンへと変わり、少しずつ夏が傾いていくのです。
(「能風爽快No.6」2006年夏号掲載)