古本LOGOS 
いわしの読書日記改め、古本屋&ブックカフェ通信

奇跡を起こす方法論は

 少し前になりますが『奇跡を起こした村のはなし』(吉岡忍・ちくまプリマー新書010)という本を読みました。新潟県黒川村で実際に起こったこと、12期・48年間に渡った故・伊藤元市長を中心に描かれたノンフィクションです。平成の大合併により、黒川村は胎内市となりました。山間の、豪雪地帯の、人口の少ない過疎の村。戦後のあの時期だから可能だったことも多く、全てを鵜呑みにすることは出来ないかもしれませんが、発想の転換や時代の先を読むまなざしからは学ぶべき点も多いように思いました。
 翻って昨日(6/11)、珠洲市では市長選挙が行われました。原子力発電所の誘致をめぐって翻弄された二十数年の後、電力関係各社から原発計画の撤回が申し渡されたのは二年前。本来ならその時点で、行われてしかるべきだった選挙が、ようやく行われたように感じています。前市長の健康上の理由による辞職から選挙戦になったのです。前市長の後継者として助役から立候補した木之下氏と、6年前の選挙では反原発側から立候補した菓子製造業代表の泉谷氏の一騎打ちとなりました。結果は新聞やニュースでも報じられたとおり、新人で無所属の泉谷満寿裕氏(42歳)の勝利となりました。投票率は84%、泉谷=8,413票、木之下=5,287票でした。

 半島の先端に位置する珠洲市は、さまざまな理由から、平成の大合併の波に乗ることはできず、単独市制の道を選びました。当てにしていた原発計画は撤回され、税収の伸びも期待できず、財政再建団体転落のがけっぷちにいます。この市の状況を乗り切るために、やっと市民が目をさましたことを今は素直に喜びたいと思います。もちろん、泉谷氏の政治的な手腕に関しては未知数です。若さだけでは乗り切れない局面も多々出てくることと思います。しかし、私たちは、今こそ、変化を恐れず、逆転の発想で持ってこの苦境を乗り切っていかなければならないのだと思います。珠洲市民の叡智を集めて、奇跡を起こす方法論を模索していけたらと思うのです。泉谷新市長さんに、ぜひとも上記の『奇跡を起こした村のはなし』を読んでほしいと思いました。

(「みずすまし通信」2006年7月号掲載〜新月いわし洞の奥能登だよりNo.5〜) 

                      

posted at 09:23:34 on 08/12/06 by nanamin - Category: 聞こえない音に耳を澄まして

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